110番に電話する




週末は姪っ子二人の運動会。父の運転で母と3人、高速飛ばして行きました。

荷物がたくさんあったので、私と母は姉の家の前で降ろしてもらい、空いている駐車場を探すのは、父一人にお任せ。

到着したのは午前10時半か11時頃。一番近くて安いコインパーキングは既に満車だろうという予想に反して、たまたま一台空いていて、止められたとのこと。

ラッキーだね!と皆で言い合って、揃って小学校へ向いました。







さて、運動会も終わり、家で一息し、子どもたちがみんな帰ってきたので、今日一日がんばったご褒美に、ご飯を食べに行こう!と、大人4人、子ども3人がワイワイと、歩いてパーキングへ向かったのです。

午後4時過ぎ、そのパーキングは未だ満車。姉は事故で足を骨折しているし、母は歳で膝を痛めてるから、近くに止められてホントラッキーだったなって思ってた。

そしたらなんと、父が止めた場所は月極駐車場で、その借主さんが父の車の前に車を止めて、カンカンに怒って待っていたのです。



その、やすしきよしのやっさんにそっくりな個人タクシーの運転手さんは、口調も声も顔も体型も服装も、やっさんそのまま。

子どもが見ているのもおかまいなしに、私たちに罵倒を繰り返します。

父が本当に申し訳ないと平謝りしたのは当然で、母も同じく。

私が「気づかなくてすみません」と横から言うと、「なんや文句あるんか」と言いながら、首を上下に動かして睨み付け威嚇してくるほど怒っています。

何度か小学校の校内放送をかけて貰ったらしく、それをまったく聞いていなかった私たちを「大人4人も揃って××かおまえら」と言ってきます。

ホント聞いてなかったから、あちゃー!と思った。

警察に通報して、ナンバーから住所を調べてもらったけれど電話番号が載ってなかったとのこと。



それで、相手が「警察呼んだるぞ」と脅すように何度も怒鳴るので、じゃあ呼びましょうということで、姉が110番に電話したのです。

警察が来るまで待っている時間がとても長く感じられました。



借主さんが乱暴に怒鳴っていて、その内容は
妻の体調が悪くて帰ってきたのに車が止められなかった。だから朝からずっとここで待たされたことは営業妨害。妻は自分よりもっとこわい。どうしてくれるのか。云々

「おまえら全員歩いて帰れ!」と怒鳴り続けている騒ぎを聞きつけ、パーキングの向かいに住んでいるご主人が「朝早くから止めてたでしょ?そら100%あんたらが悪いわ。この人ずっとここで待ってたんよ。仕事も出来へん言うて‥‥」と仲裁めいたことを言いながら出てきた。

姉は、明らかに異常な口ぶりの借主さんをずっと睨み続けているので、借主さんは、その間ずーっと平謝りをしている父を許し、怒りは姉に向けられた。

車から降りて姉を睨み、車に戻る。の動作を繰り返し。

少し離れた場所で子どもたちと一緒に居る私が、子どもの質問に答えただけでも「そこ!なんか文句あるんか」とまた車から出てきては戻ってゆく。

中学生の甥っ子にまで「この××!」と怒鳴りつける。そっぽ向いてる方がが不誠実かと思ったけれど、見ただけで文句を言われるので、それからずっと顔を背けていた。



さっきのお向かいさんは「やらしい話しやけど、いくらか渡して勘弁してもらい」と言いながら、片手をにぎにぎしてお金を示し「私は一切関係ないからね」と断言して帰って行った。

迷惑をかけたぶん、いくらかのお金でお詫びをするのは当然だろうなと思い、さてその金額をいくらふっかけられるんだろうって、とても不安になった。

現金の持ち合わせがあまり無いからどうしようと母はオロオロ。



暫くすると、奥さんが来て、迷惑そうな顔をしつつも父母の言い分を聞いてくださり、母がティッシュに包んだお金を、断りつつも、その場を収めるために受取った。

すると借主さんが「返せ!」と怒鳴るので、奥さんは一度仕舞ったお金を取り出し、返してくれた。

「いつも間違えられて困ってるんです」と奥さんが和やかに言っていた。

でも今は、借主さんの怒りが収まる方法を考えねばなーと思っているところに、やっと警察の人が二人、カブに乗って来て下さった。



警察の男性二人が来た途端、借主さんの罵声はピタリと止み、私たちの車の前に横付けに止めていた車を、彼はバックさせた。

不服な顔の借主さんに、「もうええ!」と奥さんの一声で、コトは納まった。

さすがです。

警察の人は、昼間に通報があったことを知らなかったので、事情を聞き「今回は喧嘩も何も起こらなかったので、さあお帰り下さい」と、あっさり帰してくれた。

あんなに警察警察と騒がれていたので、私は処罰のいくらかでもあると構えていたのに
なんでこんなにあっさり帰れるの?と思ったら、パーキングは私有地なので、警察が罰金を取る等は出来ないんじゃないかなってハナシ。






それからみんなでご飯屋さんへ行って、帰るまでのあいだ、子どもたちを含めてさっきの話で持ちきり。

甥が「さっきの人あほなことばっかりゆってたなー」と言うので、私は「悪いのはこっちやからしかたないよ。でもちょっと怒り方がヘンな人やったね」と言った。

姉は、手を出されるのを待ってたそうで「若い頃ならもっとイッテタけど、私もおとなになったなぁ」と照れ笑い。

せめて駐車料金分だけでも受取ってもらうべきだったのに。問題はお金じゃないなんて、本当はいい人なんだね。でもこわい。

父だけが、問題の責任を感じてか、ただただ平謝りしていたことを恥じてか、なにも喋らず、表面はニコニコしながらも、何か考えているようだった。



他人に大迷惑をかけてしまったことよりも、家族それぞれの反応が気になる。

父は仕事柄、些細なことでも全面に頭を下げざるをえない役目に慣れているから、娘や孫の前で謝罪一点張りの姿を見せたこと、気にしてないはずと母は言っている。

早急に場を収められのであれば、心が沿っていようといまいと、いとわない。

しかし、父のそういう態度を常々疑問を持っている姉は、今回の件で、父に対する、ある感情がさらに強化されたようだ。

母は、相手方に対しては内心で「やっさんが生き返ったみたい」と感心していたらしく
「面白かったわぁ」と言っていた。

その母の本音、子どもたちには見せられないよなぁ。



私は末っ子ということもあり、この件の対応に関して誰にも何も言われなかったけれど「あの子はかよわいから何も言えなくて当然」って思われてると思う。

その場にいたらどうしてた?と夫に尋ねると、「先ず謝って、その上で因縁を続けるなら、警察が来たときに相手の分が悪くなるよう持って行く」とのこと。

夫は口先だけの威嚇に動揺しない性質だし、見かけによらず腕力もある。度を過ぎた言葉は絶対に許さないので、もしも夫がその場に居たら、時間はかかっても警察のお世話にはならず、双方納得行くまで延々延々と話し合いになっていただろう。

私自身はというと、結局お金の心配をしていただけでした。

数万円なら皆で出し合って大丈夫か。数十万なら出せないからどうしよう。ああ、高い出費だなぁ。いやだいやだ。もったいない。って。

相手の感情よりもお金のこと考えてるなんて「××のオバハン」って罵られたけど、35歳にもなってこんな考え方なんだから、相手さんの言ったこと、図星です。

その上、後になって、母がティッシュに包んで渡そうとした金額を聞いたとき、「一万円ぽっちで許してもらえると思ったの?!」なんて思った。






さて、何故に父は月極駐車場に止めてしまったのでしょうか。

そのコインパーキングは、住宅地の一角にあり、道に面した8台ほどの駐車スペースの内、以前は4台ほどが時間貸し。残り半分が月極。その個人タクシー1台だけが月極契約となったのは、ごくごく最近のこと。

時間貸しは黄色のライン、月極は白のラインが引いてあり、時間貸しは車止めが車体の下にくるタイプで、もちろん月極の方にはロック板がありません。

番号は、両者同じ字体でふってあり、色だけが違います。

都会で頻繁に利用する人と違い、父はコインパーキングに慣れていません。姉は引っ越したばかりで、そのパーキングを利用するのは2回目ぐらい。

月極スペースが混在していることに気付かなかったのかも。

父は12時間の夜勤明けだったので、1台空いているスペースを見た瞬間、ラッキーと思って、確認せずにうっかりしてしまった説。が有力でした。



しかし‥母曰く、パーキングに来て前に車が止まってるのを見た父は、間髪入れず「おたくの駐車場だったんですか!すみません!」と言ったそう。

本気で間違えたのであれば、自分の車が出せないから、先ずそれを指摘するはず。
なのに、先ず謝った。

ということは、知っていて、又はそうかなと疑いつつ、他に探すのが面倒から止めちゃった。という話になってきます。そうとなると‥もう何もいえない。






そんなこんなで、暫くの間は、姉の家に遊びに行きたくない。こわいです。

私は、気持ちの通じない生き物とか、通じなくなった人とかを、心底怖れています。
なんでかな。気が小さすぎるみたい。

すぐキレる大人って、案外何処にでもいるって、外へ働きに出ている大人たちは言います。しかもヘンな人はたくさんいて、普通の人の方が少ないと。

私は、そういう人たちを排除して、存在しないものとして生きてきたと思う。

だから、そういう人たち(例えば大声で叫んでいる町のヤンキーとか)に遭遇したとき、相手の年齢関係なしに、もう武装した宇宙人に遭遇したような気持ち。

相手の心の中が未知すぎて、震えちゃう。

事象を直視せず、一辺倒に考えてしまうのです。恥ずかしいな。



今回の件について、夫が「よく間違えられるなら、パーキングの管理会社にも責任あるよな」と指摘して、ほんとだ!って思ったので、ご迷惑をかけたせめてもの償いに、管理会社に電話して改善のお願いをしようと思いつきました。

ネットで調べてみると、電話番号も会社名も、其処のパーキング名も出てこない。でもヘタをすると話を蒸し返して、町で偶然に姉家族がやっさんに遭遇したら、また何言われるかわからないから、やめにした。

そもそも度々間違えられてるなら、借主が管理会社に連絡すべきだから「ほっとけ」って主人に言われて、そうだねってことで、おしまい。

海のように深く広い心の女になりたい。



2014年9月29日 記



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